さる程に新院は御室をたのみまいらせられて、いらせ給ひしかども、門跡にはをき申されず、寛遍法務が坊へぞ入まいらせられける。御室は五の宮にてわたらせ給へば、主上にも仙洞にも、御弟にておはしましけり。此よし五の宮より内裏へ申されたりければ、佐渡式部太夫重成をまいらせられて院を守護し奉られけり。余の御心うさにや、御心のとゞまる事はましますまじけれども、角ぞおぼしめしつゞけける。
思ひきや身をうき雲となしはてゝあらしの風にまかすべしとは
うき事のまどろむ程はわすられてさむれば夢のこゝちこそすれ